栗本 薫
グイン・サーガシリーズ
外伝1〜の感想

栗本さんの本は、今のところグイン・サーガシリーズ専門で読んでいます。

外伝1〜 (その他の巻はこちらから)
1.七人の魔道師2.イリスの石3.幽霊船4.氷雪の女王5.時の封土
6.ヴァラキアの少年7.十六歳の肖像8.星の船、風の翼9.マグノリアの海賊

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1.七人の魔道師

ハヤカワ文庫
読了日:2006.5.16
評価:★★★

あらすじ

グインはケイロニア王になっていて、そのケイロニア首都(?)サイロンに黒死病が流行る。 困ったグインは助言を求めに魔道師イェライシャの元へ行くが、途中で小男アルスと踊り子ヴァルーサに出会い、敵の魔道師達に立ち向かっていく―

感想

正式名称(漢字)が「魔道士」か「魔導士」か「魔道師」か「魔導師」かややこして分からなくなってしまったのは私だけですか? ・・・ファンタジーの読みすぎでしょうか。

それはともかく、350ページ以上あったので(しかもぎっしり)、中々大変でした。 しかも、話がいきなり未来に飛んでいるのです!!

ドラクエ3の勇者の名前が「トルク(穴ネズミ)のアルス」になっていてちょっとショックでしたが、この人もいい味出してます。
本編(特にノスフェラス編)のように「グインと2人の連れのパワーがナントかでカントカで悪をやっつけてハッピーエンド」になるかと思いきや、最後のほうで不意を突かれました。

グインを読んだことがなくても気にせず読めるので、確かにグイン入門書としてもいかも知れませんね。 「豹頭の仮面」よりは読みやすかったと思います。
私自身まだ7巻しか読んでいないのに態度が大きくてゴメンナサイ。


2.イリスの石

ハヤカワ文庫
読了日:2006.6.13
評価:★★

あらすじ

マリウスが赤い街道で行き倒れていると、自分探しの旅に出ていたグインに助けられ、一緒に旅をすることになる。 そこでたどりついたのは“死の都”ゾルーディアだった。
ゾルーディアに入るなり≪死の娘≫タニアが「イリスの石をよこせ」と言ってきて、あれよあれよという間にイリスの石をめぐった争いに巻き込まれることに・・・

感想

なんとなく外伝1の「七人の魔道師」とかぶっている感じがしました。
タニア=タミヤ、ミナ=ヴァルーサ、マリウス=アルスと・・・
性格ではなくて、役割が、ですよ。
やっぱり「グインが大変な目にあう」という話で、その取り巻きとしてマリウスが使われてしまった気がします。あまり個性が出ていなかったというか。

でも、さすが(?)栗本さんだけあって、タニアが生と死に関して長々と語る 場面なんかはよくこんな文章が書けるな・・・と関心しました。
そしてそれに反論できるグインもすごいです。

栗本さんの文章が読みたい方にはオススメかもしれません。
私は栗本さんの本はグインしか読んだことがないので分かりませんが^^;

解説が少女漫画風になっていてかなり驚きました。 ナリス様(なんとなく“様”をつけてしまいますね)とマリウスはそれらしいかも?


3.幽霊船

ハヤカワ文庫
読了日:2006.7.29
評価:★★★★

あらすじ

ヴァラキア生まれ「ヴェントのイシュトヴァーン」が十六歳の時の話。
賭場でイカサマをする人のインチキを見抜いたら、それはヴァラキア公弟、オリー・トレヴァンだった。
”ふとっちょオリー”は逃げ出したイシュトヴァーンをなんとしても探し出そうとし、彼はやむなく海に身を投じる羽目に。
運良く出港間近のオルニウス号の船長、カメロンに拾ってもらうが、オルニウス号は“幽霊船”の正体を暴きに行くのだった。

感想

そして、クラーケンとニギディアです。

「12巻までに読んだほうがいい」と教えてもらったにもかかわらず、そのことを忘れて12巻を先に読んでしまいました^^;

イシュトヴァーンもこんな素直な時期があったのか・・・と、当たり前(?)ながら驚きました。 同時にカメロンがどんな存在だったか・・・ちゃんとイシュトにも本心から慕っている人がいたのですね。

いままでのグイン(特に外伝?)としては珍しく、と言ってはなんですが、感動しました。
木彫りの仕方も鳥の捕まえ方も、「〜にかけて」という口癖も、この時覚えたわけですね。 青白いイリスにかけて、イシュトが自分で考えたのだろうと思っていただけに以外でした(笑)

イシュトヴァーン、ちょっと好きになりました。ランクアップです。
まだ喪中なので(?)1位はミアイル王子ですけどね・・・。


4.氷雪の女王

ハヤカワ文庫
読了日:2006.8.31
評価:★★★★

あらすじ

グインとイシュトヴァーン、マリウスは北の賢者ロカンドラスを捜し求めて北のノーマンズランドに向かう。 その途中、美女だらけの村へ立ち寄る(ヴァルハラの魔女)。
その後、「北のモルフキン」と名乗る小人に出会い、ヨツンヘイムに閉じ込められているミズガルドの宝を取るのと引き換えに、 イシュトには財宝を、グインにはロカンドラスの情報を与えるという取引をして、宝を守る三つの守護者フルゴル、ガルム、クロウラーに立ち向かうが・・・

感想

いつものように図書館の書庫から取ってきてもらおうと職員さんに頼んだら、「見つかりません」と言われてしまい、ダメ元で近くの書店に行ってみると、 なんと、ほぼ全巻揃っているではありませんか!
わざわざネットで買う必要は無かったのです・・・でも早く手に入って良かった^^

外伝なのに、これを読まないと17巻以降が(イシュトヴァーンの動きとか)分からない部分が出てくるようなので・・・外伝2の「イリスの石」の続きです。

外伝には思えない内容でした。何故本編でないのか腑に落ちないくらいです。
本編16巻のあとがきによると、ここでマリウスの女たらしぶりがバレて、株価が下落したそうです(笑) でも私は好きですよ。

もう一つ、腑に落ちないこと・・・イシュトについてなんですが、この話(イリスの石・氷雪の女王)はイシュトがナリス様に会った後の出来事という認識で合っているのでしょうか?
リンダとレムスをアルゴスに送り届けた後、アグラーヤで密書を手に入れ、ナリス様に会って逃げ出し、ゾルーディアでグインとマリウスに会う、と・・・

案の定マリウスとイシュトは仲が悪いですね。 グインがいなかったら本当に殺しあっていたかもしれないわけで、やっぱりマリウスの方が弱いわけで、ヴァルハラの魔女たちに食われていたかもしれない・・・。
まぁ、ヤヌス神がそんなことで2人の命を奪うことを許したりはしないでしょうけどね。

3人の性格の違いが出ていて面白かったです。結構、急展開でしたし。
今回の私のポイントは、「イシュトが音痴だった」事実です(笑)


5.辺境の王者

ハヤカワ文庫
読了日:2006.9.12
評価:★★

あらすじ

『湖畔にて』アル・ディーン13歳の時、湖畔で一人の老人と出会う。
『風の白馬―レムスの恋唄』レムスがパロを奪還する前、草原で出会った少女との恋。
『時の封土』グイン、マリウスが時に忘れ去られた城を発見する。
『白魔の谷―氷雪の女王再び』外伝4の続き、巨人ローキと戦うグインたち。
『樹怪―黄昏の国の戦士』謎のダークランドに迷い込んだグイン、シレーヌと戦う。

感想

「湖畔にて」と「風の白馬」が純粋で好きです。
「時の封土」はまあまあ、「白魔の谷」は外伝4の「氷雪の女王」の続きという心構えで読みました。 「樹怪」は・・・どうなんでしょう?
まだそこまで読んでいないのに、シルヴィアさんを探しているらしいことが分かってしまいまして・・・ 「七人の魔道師」に近い雰囲気でした。
要するに、

	グインが主人公
	   ↓
	謎の空間に入り込んでしまう
	   ↓
	謎の魔術師が出てくる
	   ↓
	グインに助言する
	   ↓
	グイン、気合と気力で勝つ
	

というパターンです。解説の方は私の評価と逆(?)で、「樹怪」がお気に召しているご様子でした。

短編が苦手でも、何らかの話が土台になっていると、読みやすいものなんですね。


6.ヴァラキアの少年

ハヤカワ文庫
読了日:2007.1.24
評価:★★★★

あらすじ

ある日イシュトヴァーンがいつものようにチチアの通りを歩いていると、上から少年が降ってきた。
少年はヨナと名乗り、ばくちで負けて、お金の変わりに攫われた姉のルキアを助けてくれと懇願してくる。 イシュトは姉を助ける交換条件として文字の読み書きを教えてもらうことになり、 やがて二人は義兄弟の契りを交わすほど仲良くなる。
そのうちイシュトはヨウィスの民の女のふりをし、ルキアを攫ったカンドス伯の手下のばくち打ち、黒のブルカスに勝負を挑み、見事勝利するが…

感想

イシュトヴァーンがオリー・トレヴァンに追われてヴァラキアを発つ半年前の話です。つまり彼が16歳の頃ですね。

軽かったです。風景の描写などが少なく、会話中心でしたので。
表紙の絵もなかなか。ヨウィスの民のイメージでしょうか。

ははあ。本編の31巻だったか32巻だったかでイシュトがチラッと言っていた「ミロク教徒の頭のいい子」とはヨナのことだったのですね!
すっかり読み飛ばしていました。ふむふむ。

若かりし頃(今も十分若いですが・笑)のイシュトと、4つ下のヨナとの親密な関係がありありと窺えて、よりイシュトに詳しくなれた気分です。
この、なんというか本編より少し子供っぽいイシュトがいいですね。
ルーン、ヴォダルーン、ガンダルーン。覚えましたよ。ええ。

一つだけよろしいですか。
賭博のルールが今ひとつ分かりませんです。
奇数と偶数、数字の合計、役。意味は分かるのですが、なぜその目でその役になるのか?が今ひとつ…ただの私の理解不足ですが。

ヨナはパロでどうしているのでせうか。
元気だとよろしいですね。


7.十六歳の肖像

ハヤカワ文庫
読了日:2007.2.5
評価:★★★★

あらすじ

『闇と炎の王子―ナリス十六歳』ナリスの元に闇の司祭グラチウスが現れ「お前は王になりたいのだ」と言い、ナリスの父とその弟(前国王アルドロス三世)の約束などを見せる。
『暗い森の彼方―ヴァレリウス十六歳』ヴァレリウスが魔道師になる前の話。パロで倒れていた彼をリーナスが助ける。しかし逃走。魔道師(?)イー・リン・イーにに捕まってしまう。
『いつか鳥のように―マリウス十六歳』ナリスに”キタラ禁止令”が出されて一年余り。湖のほとりでヨウィスの民イーゴウがキタラを弾いているところに出会う。こっそりとイーゴウにキタラを教えてもらうが、実はヨウィスの民などではなかった。
『アルカンド恋唄―スカール十六歳』アルカンドで助けた豪商の娘ナウカシアと恋に落ち「俺の妻になれ」とまで言うが、草原の民であるスカールとは一緒になることができない。草原へ戻らんと馬を走らせていると、騎馬の民がアルカンドへ向かうのを発見し…

感想

ナリス、ヴァレリウス、マリウス、スカールが十六歳のころの話、短編集です。

個人的にはちょっと印象が薄めの感じでした。
ナリス様の勉強帰りの場面とヴァレさんエピローグが同じ時期で、マリウスはその一年〜二年後くらいですね。

う〜む、皆さん全然違いますね(笑)
特にナリス様とマリウスが…スカさんとマリウスでも、ですが。
でも、一番なよなよしていたにしても、マリウスが好きです。
ミアイルさまに話しかけて追憶〜アル・ディーン十六歳〜オクタヴィアとの夜という具合に流れていて、最後は幸せそうなので何よりでした。

それと、リーナスが思いのほか好少年で驚きました。
ルナン伯じゃないですけど、「うすぼんやり」なところがあるのかと思っていたので(苦笑)

ヴァレさんは以外に明るい、スカさんはあんまり変わらない、といった印象です。

ただですねぇ…解説(解説です。あとがきではないのです、なぜか)がまだ16にすらなっていない自分にはキツいものがありましたね。
自分が幼く弱く役立たずな人間・年だとは分かっているつもりです。一応。
多分何年か、下手をしたら何ヶ月かで今の自分が恥ずかしい言動をとっていたと思うようになるでしょう。
ただ、それを何らかの媒体で残したいとも思うのです。日記のように。

色々考えているとまた憂鬱になってくるのでこの辺で……。


8.星の船、風の翼

ハヤカワ文庫
読了日:2006.8.24
評価:★★★★★

あらすじ

後にはクリスタル公としてパロ宮廷にその人ありとうたわれたアルド・ナリス。
しかし彼がクリスタル公となる経緯は、決して平穏なものではなかった。

↓以下ネタバレを含みます。反転してお読みください。↓
ナリスは18歳でクリスタル公になるまで、大人しい性格で、体が弱かった。
その異母弟ディーンは、引っ込み思案で王立学問所が大嫌いでナリスが大好き。
しかし、ナリスがクリスタル公としてその本性を露にした時、ディーンの想像する「兄」としての像は崩壊した。
そして、ナリスがベック公にも勝利し、敵対する人とも上手く折り合いをつけたころ、アル・ディーンは宮廷を去っていたのだった。
↑ここまで↑

感想

ブログにコメントをくださる方のオススメの一冊です。
いきなり飛んで外伝8巻目で、1990年初版。
今読んでいる正篇「パロへの帰還」が83年初版なので新しい!と言いたくなっちゃいます。 でも、私より年上なんですね、これが。

こ、これは・・・
なんと言えばいいのでしょうか。いい話だったとしたら、「感動した」と言えるのですが・・・非常に悲しいお話です。

ナリスがディーンに
「王立学問所をやめて聖騎士団に入団し、クリスタル公の右腕、補佐として副将を務めて欲しい」と言った時、ディーンはよく断ったと思い、感心です。
私なら口が裂けても「できません」とは言えなかったでしょう。
どんなに戦が嫌いでもナリスを怒らせるくらいなら「副将として頑張ろう」などとさえ考えてしまったかもしれないのに。

兄が好きで好きで大好きで、でも変わってしまった兄にショックを受け、足元で文字通り悶絶して、それでも「できません」と言った、王家のディーンをやめ、マリウスとなった日までの話なわけです。

・・・せっかくナリス様に対する意識を改めるために薦めてくださったのに、結局マリウスに感情移入している自分がいます。

なぜナリスがそこまで本性を隠していたのか解せませんが、でも、ナリス様に対しての意識も少しは変わったように思います。
孤高の存在もつらいのでしょう。決してディーン(マリウス)のことを嫌っているわけでも、ましてや忘れてしまったわけでもないのは良く分かりました。
「トーラスの戦い(正篇15巻)」でイシュトヴァーンのことを「ディーン」と読んでしまったのはとても印象的でしたしね。
言葉ではけなしていても、常に弟のことを思っていて・・・せっかく新たなお供になりかけたイシュトヴァーンがいなくなってしまった事は相当な精神的ダメージがあったのではと思います。 それをおくびにも出さないのがナリスのナリスたる所以なんでしょうけど^^;
そして、「ナリス」が「クリスタル公アルド・ナリス様」になるまでは風当たりが強かったわけです。 初めからちやほやされていた訳ではない、と。

読み進めていくうちに、いつかきっと読み返したくなる日が来ると思います。そういう類の本なんですね。

全く関係ない話をすると・・・平均寿命のことです・・・ナリスが「人の半分しか生きられなくたって、その短い三十年が充実していればいい」と言う場面がありました。 ということは、60歳くらいまで生きられればまぁまぁの時代・・・でしょうか?(←考えすぎ?)

そうそう、表紙の絵が今まで(注:この本を読んだのは、本編の挿絵が加藤直之さんだったころなのです)とあまりに違うので驚きました!
口絵が幻想的です。神話のような雰囲気というか・・・挿絵で文章の感じ方もおのずと違ってくるみたいです。不思議ですね。


9.マグノリアの海賊

ハヤカワ文庫
読了日:2007.4.10
評価:★★★

あらすじ

イシュトヴァーンの若かりし頃。仲間を集めて伝説の宝を探すべく《ニギディア》号に乗り、航海をしていた。 物資がなくなったために寄ったダリア島でかもめ亭のナナ、島長ポム大公の娘シリア、その御付のルネ大尉らと出会う。
ダリア島ではマグノリアの花が盛んな季節、ドライドン祭りが開かれる。イシュトヴァーンはそれぞれの女達と恋をし、やがて去っていくのだった―

感想

ミュージカルになったらしいですね。
これをどのように演じたのか…見てみたかったです。

う〜ん、私としては、良くもなく悪くもないといった印象でした。話は素敵だし、儚さも感じられますが…
やはり「青春」が過ぎ去った過去の方々にしか分からないのでしょうか。

でもイシュトヴァーンはこの頃が一番よかったですよね。それだけは汲み取れました。
特にアリと手を組んでからの彼は、ナナさんが恐れていたことが現実になっていると言うのか…虹の輝きが翳っていますから。

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